切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助療法が治療選択肢となっているが、EGFR遺伝子変異陽性例では病理学的奏効(MPR)がみられる割合が低いと報告されている。そこで、術前補助療法としてのオシメルチニブ±化学療法の有用性を検討する国際共同第III相試験「NeoADAURA試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Jamie E. Chaft氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験のMPRの最終解析結果と無イベント生存期間(EFS)の中間解析結果を報告した。本試験において、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤は化学療法と比べてMPRを改善したことが示された。本結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された1)。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:EGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の切除可能なStageII~IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者
・試験群1(オシメルチニブ+化学療法群):オシメルチニブ(80mg、1日1回、9週以上)+カルボプラチン(AUC5、3週ごと3サイクル)またはシスプラチン(75mg/m2、3週ごと3サイクル)+ペメトレキセド(500mg/m2、3週ごと3サイクル)→手術→医師選択治療 121例
・試験群2(オシメルチニブ単剤群):オシメルチニブ(同上)→手術→医師選択治療 117例
・対照群(化学療法群):カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド(いずれの薬剤も同上)→手術→医師選択治療 120例
・評価項目:
[主要評価項目]MPR
[副次評価項目]EFS、病理学的完全奏効(pCR)、N因子のダウンステージング、安全性など
主な結果は以下のとおり。
・全体として女性の割合が高く、オシメルチニブ+化学療法群60%、オシメルチニブ単剤群65%、化学療法群75%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、それぞれ50%/50%、/51%/49%、51%/49%であった。StageII/IIIの割合は、それぞれ49%/51%、50%/50%、51%/49%であり、N因子がN2の割合は、それぞれ39%、35%、34%であった。
・手術施行割合は、オシメルチニブ+化学療法群92%、オシメルチニブ単剤群97%、化学療法群93%であり、R0切除は、それぞれ91%、95%、93%であった。いずれの群でも完全切除に至った患者の91%が、術後補助療法でオシメルチニブの投与を受けた。
・主要評価項目のMPR割合は、オシメルチニブ+化学療法群26%、オシメルチニブ単剤群25%、化学療法群2%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(オッズ比:19.8、95%信頼区間[CI]:4.6~85.3、p<0.0001)、オシメルチニブ単剤群(同:19.3、1.7~217.4、p<0.0001)が有意に良好であった。いずれのサブグループにおいても、オシメルチニブ使用群が良好な傾向にあった。
・pCR割合は、オシメルチニブ+化学療法群4%、オシメルチニブ単剤群9%、化学療法群0%であった。
・ベースライン時にN2であった患者集団において、ダウンステージングが認められた割合は、オシメルチニブ+化学療法群53%、オシメルチニブ単剤群53%、化学療法群21%であった。
・12ヵ月EFS率は、オシメルチニブ+化学療法群93%、オシメルチニブ単剤群95%、化学療法群83%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(ハザード比[HR]:0.50、99.8%CI:0.17~1.41、p=0.0382)、オシメルチニブ単剤群(HR:0.73、95%CI:0.40~1.35)が良好な傾向にあった。しかし、中間解析時の有意水準は0.002であり、統計学的に有意な差ではなかった。本解析時点の成熟度は15%であり、今後も解析が継続される。
・術前補助療法において、Grade3以上の有害事象の発現割合は、オシメルチニブ+化学療法群36%、オシメルチニブ単剤群13%、化学療法群33%であった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ9%、3%、5%に発現した。
本結果について、Chaft氏は「EGFR遺伝子変異陽性の切除可能なStageII~IIIBのNSCLC患者の治療戦略に、オシメルチニブ±化学療法を組み込むことを検討すべきであることが示された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)